2013年9月7日土曜日

アメリカ買い付け2013年8月 vo.3

『続々•Flat tire』
”1時間”
短いような長いような微妙な時間。
さっきまで気にならなかった街並が急に気になり始める。一人になり冷静にまわりを見渡すとあまり治安の良い場所ではなさそうだ。いや、むしろ悪い。街頭も少なく薄暗い。ウーハーを積んだ黒人のピックアップが道を徘徊している。たまたま停めた家の前に悪そうな車がどんどん集まってくる。車の中の僕に気付いた玄関に立っているRUN-D.M.Cみたいな3人組が”アイツなんでオレんちの前に車停めてんねん”とこちらの様子を伺っている。
”よりによってなぜこんな場所で ”
僕は全てのドアの鍵をロックしこれでもかというぐらい座席を倒し忍者の様に息をひそめた。
"そう、オレはジャパニーズニンジャだ”と自分に言い聞かせて冷静を保つ。

30分経過。
まだ半分か。長いな。
その時、一台の車が僕の車に横付けで駐車した。
なんで?明らかにロードサービスの車ではない。
僕はさっきよりも深く深く座席へと潜り込んだ。
”トン、トン”
窓を叩く音。ヤバい。
とっさに寝たふりをしてみる。
”トン、トン、トン”
ダメだ、噓寝 はバレている。
最悪のケースが脳裏をよぎる。
もし、拳銃を突きつけられたら...降りるしかない。

意を決し
恐る恐るも顔を上げると———、
そこには満面の笑みのさっきの夫婦が立っていた。


『ロードサービスが30分くらい遅れるみたい。ごめんね。お腹減ったでしょ。これでも食べて元気出して。私たちがお気に入りのお店のよ。』
笑顔の二人。
怖い人じゃない安心感と思いがけない優しさにちょっと泣きそうになる。 
遠く離れた異国で心細くなった時こんなにも優しくされたら誰だって泣きます。
”人にやさしく ”
そんな事をあたり前の様に出来る人になりたいと心から思った。
”じゃあね”と足早に立ち去ろうとする二人に”写真だけ撮らせて”とお願いするとすごく笑ってくれた。
”Ha,ha,ha.この状況でそんなこと言うの”
”Ha,ha,ha.さっきまで隠れてたのに”
バレてはいたが恥ずかしくなんてなかった。
二人が笑ってくれた事が堪らなく嬉しかった。


僕はこの二人の笑顔を忘れる事はないだろう。


それから1時間待ってようやくロードサービスが到着。
タイアをスペアに交換。 左の前輪を外し始めた。あれっ?ランプ付いてるのは右やったはず。そっちも?と確認しにいくと左の前輪は完全にバーストしてタイアが半分以上無い状態。それを見た時はさすがに背筋が凍りついた。強行して走っていたらどうなっていた事か考えただけで恐ろしくなる。結局、前輪両方をパンクして一方をスペア、一方を空気をパンパンにしてどうにかレンタカー会社へと急いだのであった。

レンタカー会社での押し問答で1時間ほどかかりどうにか別の車を用意してもらう。
この時点で午前1時すぎ。
入れ直す気合いも風前の灯。
しかし、”行く”以外の選択肢が無い。

そこからのドライブは”過酷”そのもの。
走っても走っても、全然、着かない。
100km走ったと思ったら次も道なりに90kmの表示。
その後も50km、その後も30km、20km...
”もう!なんなん!”
車中、次から次へと迫りくる睡魔との戦い。
あんなにも4つの窓全開にして走ったのも初めて。
あんなにも本気で自分をビンタしたのは初めてです。
今後、グーグルマップなんて信じない。

結局、ホテル到着は午前4時。
自分でもよく来る事が出来たなと感心する。
長い長い夜が終わろうとしていた。


明日は5時起きか。
たぶん、ちゃんと起きれるだろう。
そんな自分は偉いなと思う反面、なぜか少し腹立たしく思いながら床に就いた。

続く。

0 件のコメント:

コメントを投稿