2013年9月30日月曜日

アメリカ買い付け2013年8月 vo.10

『村田さン家(ち)』
”で、どんな格好が好きなん?テイストとか、ブランドとか、あんの?”
”まだ全然分からないんですけど.....僕、人とは違う格好がしたいです!”
三井寿の”バスケがしたいです”並みにズキュンときた。
今から7、8年前の入社初日に堀江店でタムーと交わした最初の会話だ。
”人とは違う格好がしたい。”
僕が服屋に入った時と同じ気持ちだった。
変な自信とかではない信念みたいなものをその時、感じた。

そもそもなぜタムーなのか?
それはタムー入社1日前に遡る。

堀江店にて。
浅浦さん『明日からタムーくるぞ。 』
僕『タムーですか?田村君ですか?』
浅浦さん『そうや。』
...出勤したらその子は”村田”だった。
僕『間違えてますよ、浅浦さん。あの子、村田ですよ。』
浅浦さん『そうか。もう、タムーでええやろ、呼んでもうたし。』
そんな理由で...
それ以来、今までずっとタムーだ。

当初の印象は”キムタクを意識した滋賀の子”。実際、髪も長かった。身長は170cmの僕より低い。足も短くお世辞にも良いスタイルなんて言えない。最近、世間で錦戸亮なんて言われたこともあるらしいが僕から見たらせいぜい錦野旦が関の山だ。いつか落とし穴に落としたいと思っている。

そんなタムーが相談してきた。
『結婚指輪、インディアンジュエリーで作れないですか?』
『ブランドとか興味ないですし自分が本当に気に入った、人とは違うような指輪がしたいんです。』
あの日に戻る。
”フラッシュバック”
こいつ変わらんな。
あれから何年経ってもタムーはタムーのままだった。
そんな些細な事が嬉しかった。
一肌脱ぎたい気持ちになってそれを快く引き受けた。

(余談)
アメリカ買い付け6日目。
直接、パットの家にオーダーしていたリングを引き取りにLAGUNAへと向かった。
初日に出会った時はまだ出来上がっていなかったので2、3日で仕上げてくれたのだろう。相当、急かせてしまった事になる。悪いなとは思ったが結婚式に間に合わなければ意味が無い。

その日、パットはインディアンの会合で留守だという。マーラとクリスが笑顔で出迎えてくれた。僕は到着してすぐに急いで出来上がったリングを確認した。


24Kのファインゴールドとブラックのジルコニウム。
それはそれは素晴らしい出来のインディアンジュエリーが姿を現した。
”Fantastic...”
納得の出来。納期も問題ない。一安心であった。

マーラ、クリスとお茶を飲みながらの世間話。
20分くらいが過ぎた。ふと頭をよぎる。
”そういえばこれいくらになったんやろ? ”
金、銀、銅はその日のレートで価格が変動する。作る前に聞いてみたが出来上がらないとはっきりとしたプライスは分からないとしか答えてくれなかった。ただ、同素材のバングルの値段は知っていたのでリングなら大体これくらいだろうと予想はしていた。
”メッチャ高くても10万くらいやろな”

マーラに値段を聞いた。”私は聞いてないわ。メールで確認してみるね。”
しばらくするとパットから返信が来た。マーラはメールを僕に見せてくれた。
〜〜〜
〜〜〜
$3500?
〜〜〜
ん?
読み返す。
〜〜〜
$3500............
なんで。
サザエさんのエピソードなんかである0一個多いやつか?
もう一度見直す。
$3500。
$1=¥100として¥350000−やんな。
違うか?
いや、合ってるわ。
合ってんな.....


....さ、さ、さ35万円ーーー!


意識が飛びそうになった。
血の気が引くとはこの事か。
頭が真っ白になるとはこの事か。
マーラとクリスは何か喋っていたが全く覚えていない。
上の空過ぎてどんな感じでお別れしたのかも曖昧だった。

スペシャルオーダーと急かせた事もありキャンセルは不可能。買取は必至だった。
”どうしたものか?安くなると言ってもさすがにこの値段はタムーも無理やろな?”
色んな案が頭を駆け巡る。しかし、一つとしていい案など思い浮かばない。
結局、タムーにお願いするしか方法はなかった。

自分でもビックリするくらいの長文のメールをLINEで送った。
待つ。見る。待つ。見る。
既読なのに返信が無い。迷っている?相談している?断る理由を考えている?
良くない返事を想像する。
そんな時、タムーからの返信。

『買います!!』

”Oh,Jesus"
目の前が開け、すーっと肩の荷が降りていくのを感じた。
これから”村田”と書いて”おとこぎ”と読む。


9月22日、晴天。京都。
笑顔の多い結婚式だった。
二人の晴れ姿。
祝福する仲間達。
素晴らしき時間。
心から”おめでとう”。

”タムーへ”
結婚指輪とは”途切れることのない永遠の絆”を表すらしい。
ただ、僕は勝手にそれだけではない様な気がしている。
頼んだ事への責任、人を思いやる気持ち、お嫁さんの理解、ファッションへの信念。
その指輪は大げさにも”あなたを映す鏡”のように感じてならない。
変わらない為に磨き続けること。
大変でしょうが二人なら出来る。
そう僕は信じています。

”村田さン家(ち)”のますますのご多幸ご健勝を心よりお祈り申し上げます。

P.S ”ブログじゃなくメールせいや”と言う声が聞こえる。

続く。

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