『続•Flat tire』
時計を見る。
なんだかんだで午後9時過ぎ。
ぼやぼやもしてられない。
路肩でハザードを出しながら冷静に思い返してみる。
”パスっていったな→点滅しだす→数字減ってく→スゴい音なる→パンク”
うん、絶対パンク。
”なぜ、着いてそうそうにこんな事なってしまうのか?オレ!”
”なぜ、そのまま行けると思ったのか?オレ!”
”なぜ、数字が減っていくのを見て爆発すると思ったのか?オレ!”
初めての事に打たれ弱い自分に落胆以外の感情はない。
緊急時のオレにもう期待しないと心に決める。
助けを呼ぶしか他は無い。
まずは高速からの脱出。
ハザードを出しながらロースピードで一番近い出口で降りる事に成功。
パタパタとスゴい音は鳴り止まない。
降りたすぐの信号の手前で止まり外に出て赤になるのを待つ。
ビュンビュン飛ばす車。なかなか変わらない信号。
ようやく信号が変わり一台の車が止まった。
”うぅん..."
少し躊躇。
しかし、こんな時に人見知り出してる場合じゃない。
このチャンス逃がしてなるものか。
勇気を出して手を振る。
完全に不審がられている。
引きつった笑顔がより一層不審感を醸し出す。
それでもさっきよりもオーバーリアクションで手を振る。
そして、ようやく助手席の窓が開いた。
止まってくれたのは近くに住んでいるという夫婦。見るからに優しそうな夫婦だ。ご飯を食べに出かけ今から家に帰るらしい。 事情を説明してレンタカー会社に電話してもらえる様に頼んだ。先程の不審感もなくなり”今さっき借りたばっかり?ついてないわね。”と心配してくれる。ただ、待てど暮らせど電話が繋がらない。5分、10分、20分...でも繋がらない。パンフレットの”24時間対応します”の文字が腹立たしくなってくる。僕は申し訳ない気持ちイッパイで空を見て待つほかなかった。
...30分後ようやく電話が繋がった。
奥さんは適切に事情を説明し、責任もそちらにあるとまで交渉してくれた。
詳しい場所を説明しロードサービスも手際良く手配してくれた。
”助かった〜。一安心。”
夫婦『ロードサービスが来るまで1時間程かかるけどここで待っていてね。』
僕『とても親切にしてくれてありがとう。なんてお礼を言ったらいいか。』
僕は連絡先を書いてとメモを渡した。
横に首を振る二人。
夫婦『困った時はお互い様。』
笑顔の二人。
僕『じゃあ、せめてお名前だけでも』
夫婦『いいの、いいの。気にしないで。楽しい旅行をね。』
走り去る車。
まさか自分がこの台詞を使う時が来るとは夢にも思いませんでした。
名前も知らないご夫婦、本当にお世話になりました。
あの人達に出会わせてくれた神様に感謝です。
そして、オレはまだツイていると強気になるのでした。
続く。
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